満月の誘惑
「希望か。…では一つ、ある」
「何でしょう?」
「今日の夕方から明日の夜まで、外に出たい」
「明日の夜まで?でしたら、その分の食事かお代金がいりますね」
「いや、何もいらん」
「え…。では、私にできることはございますか?」
「何もない。必ず帰ってくるから、待っていてくれるだけで良い」
「はい…、分かりました。お気をつけて」
本当はどこへ行かれるのか、聞きたかった。
お金はいらない、食事もいらない。明日の夜まで、どうやって過ごすつもりなのか。
家に戻られるのであれば、そこで食事をされるし、ご友人に会いに行かれるのであれば、そこでご馳走になるのかも。