満月の誘惑
「…あ、ごめんなさい。時間がないですね。急がれた方が、」
自分の足元を見てモジモジしていると、柔らかく旦那様に包まれた。
あ、懐かしい。あの時の温かさと同じ安心感。
今回はその安心感とはまた別に、少し心臓がうるさく、顔が熱く感じる。
この間より、体も密着しているせいだろうか。
「やっぱり…、どこに行かれるのか、何をしに行くのか、聞きたいです。心配です…」
遠慮がちに旦那様の襟元を掴んでみる。
甘えるわけじゃないけど、私の気持ちが届いて欲しくて。
旦那様は私を抱きしめる力を強めると、私の首元に顔を埋めた。