満月の誘惑
「柚葉、あなたは荘司さんとお話ししてなさい。ここは私がやるから」
「ううん、今入れ終わりましたから。持っていきますね」
旦那様の傷は、戦争の古傷なんだろうか。年は私より十ほど上だと聞いている。
そうなると、戦争時分は主戦力だったことになる。
今ここに居るということは、戦争に行かなかったのか、生き残って帰って来られたのか…。
「お待たせしました。粗茶ですが…」
「ありがとう」
お茶を啜る音だけが聞こえ、一息二息と旦那様がほっとされたところで、疑問を投げかけてみた。
「旦那様。一つお聞きしてもよろしいですか?」
「あぁ、何だ」
「その傷…、どうされたんでしょうか」