満月の誘惑
「不安に思わせてしまって悪いのは、承知している。ただ、そう簡単にはいかんのだ」
「簡単には…。前の奥様の赤ん坊を世話しているから、とかでしょうか」
お母様に聞いた、お父様の隠し事の話を出してみると、ポカンとして首を横に振られた。
「隠し子などは居ない。結婚はこれが初めてだ」
このままの勢いで行ってもらえるか期待したけど、何もなく私の許可を待っているようだった。
話してもらえないなら、自分で確認しに行けば分かる。
お母様のように問い詰めるほど、気が強いわけでもないし。