満月の誘惑



家に戻ってきた時も、私たちが近寄るのを嫌がっていたな。出る時は私のことを抱きしめてくれたから、触られることに抵抗を感じているようには思えないけど。



考えている間に旦那様は立ち上がっていて、みんなの心配を無視して、まだ苦しそうに胸を摩りながらも早足で歩き始めた。

今ここで家に戻っていたら、絶対に見失う。



心の中で両親に無断外出を謝り、旦那様を追いかけた。




旦那様は背が高い分、足幅も大きいから、小走りしないと追いつけず、体力の減りが早い。


時々立ち止まって呼吸を整えながら、見失わないように目で追う。



まさか二日間歩きっぱなしの修行をしているなんて、無謀なことはしていないだろうか。

でもそれで、顔に傷ができることは極めて低い可能性だ。



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