満月の誘惑
問題はここから。
本当に狼人間なのか、確かめたい。
でも、鉢合わせてしまったら、私は月城家に一生帰れない。このまま引き返しても良いが、森に入った理由が他にあるならと考えると、好奇心が勝ってしまい、家には帰れなかった。
月の光が段々と明るくなってきて、時々遠吠えが聞こえる。
犬なのか狼なのか。
そんなことを考える暇もなく、鉢合わせた時にどうやって逃れるかを巡らせる。
命乞いなんて通用しないし、攻撃は勝負が目に見えている。
静かに立ち去るのが賢明か。
その答えに辿り着くと、細く高くそびえ立つ木々の間から、何かが蠢(うごめ)いているのが見えた。
草むらに体を隠して様子を見ていると、蠢いているのは人間のようで、蹲りながら唸り声をあげている。