満月の誘惑
苦しみを知っているからこそ、見捨てられなかった。
どんな姿でも、旦那様は私の旦那様。
私のありのままを受け止めると、包み込んでくださった。
旦那様は明日、帰ってくる。
私の気持ち、ちゃんと伝えられるだろうか。
でも、どういう顔で出迎えたら良いか。
「荘司さんもきっと分かっているよ。だから襲わなかったんだろう」
そう、両親は言うけど。
とにかく、私自身がゆっくり眠って、旦那様を迎える準備を万全にしておこう。
いつもより一時間早く寝床に着き、朝を待った。
でも、森の中を彷徨う狼の姿をした旦那様が目に焼き付いていて、目を閉じるのが怖い。
充分な休息が取れたのかも分からず、結局日が昇る前に布団を畳んだ。