満月の誘惑
私の名前を呼ぶ旦那様。
胸が温かくなった。
旦那様が目の前にいる。私の名前を呼んでいる。
思わず嬉しくて、傷だらけの旦那様に抱きついた。
襟元をギュッと掴むと、柔らかく受け止めてくれながらも、痛む傷に顔を歪ませている。
「ごめんなさい。痛い、ですよね」
「いや、大丈夫だ。…柚葉」
呼ばれた声に顔をあげると、旦那様は私を欲してくれているのが分かった。
それに応えようとしたけど、旦那様の顔が近づくにつれて、一昨日の狼の姿を思い出して、顔を避けてしまった。