転生治癒師の私が第二王子を攻略してしまった件について

 眩しい。ふっと意識が浮上する。瞼を開けると、木目の天井が目に入る。そこかしこが煤けており、綺麗とは言えないし、病院とは思えない。ゆっくりと身体を起こして辺りを見回すと、古めかしい家具や竈が目に入る。しかも寝ているのは藁の上だ。
「え?」
 しかも声が高い。驚いて、まじまじと自分の手を見つめると、手が小さいのだ。おかしい。どうなってしまったんだろう、私。必死に頭を動かしていると、扉が開き、古びたワンピースのような服とエプロンをつけた壮年の女性が入ってきた。壮年の女性の瞳はアンバーで、茶色の髪が腰まで伸びている。
「ああ、エミリー! 目覚めたのね!」
「だ、誰? うっ」
 頭の中がひび割れるように痛み、途端に様々な記憶や知識が傾れ込んでくる。
 ここはリンデンバウム王国の貧しい農村。私はアイリーンの娘のエミリー。十歳。可愛らしい顔立ちで茶色の髪を腰まで伸ばしている。貧しい農家で、父親は幼い頃に死んでしまった。
 次々と流れ込んでくる記憶や知識に圧倒されて、私は再び気が遠くなっていった。
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