俺の女



『まだできたばっかりなんやけどなっ…ちゃんと…このお腹にあたしの赤ちゃんがいるねんで!…喜んでくれるよな?』





すがるような思いで、母に訴えた。


自分のお母さんなら喜んでくれる…
美蘭…ゆーてたもんなっ!!




…しかし、その願いもむなしく、冷たい言葉が返ってきた。





「「……今すぐおろしなさい。」」


「「「!!!」」」

『え…?』





その場にいた大人たち以外が、全員耳を疑った。


美蘭は、信じられないといったように恋嘩の母を見た。





『何をッ――』

「「恋嘩ちゃん…その年で子供を作るなんて…どんだけ大変かわかってるの?」」

『お母さんは黙っててよ!!』





美蘭の母親は美蘭を睨みつけ、美蘭も母親を睨みつけた。


恋嘩は、母の言った言葉が信じられなくて、声を震わせる。






『…お母さん?』

「「あたしは…今の貴方と同じぐらいの年で…貴方を産んだ。でもね…それが予想以上に大変で…手におえなくなった。それで…貴方を捨てたの。」」


『――そんなッ…』






どこか期待していた思いが、一気に崩れ去った。


理由がほしかった…

ただ…捨てたくて捨てたわけじゃないっていう…
ただそれだけの理由がほしかっただけなのに―――





「「どれだけ大変か…経験した私が言うわ。…おろしなさい。」」

『……嫌やッ…』

「「…恋嘩!」」

『なんで…?なんで…自分の子供を殺さなあかんの…?』

「「お前らなんかまだまだ子供だ。育てられるか。」」





横から入ってきた父を睨み付けながら、声をあげる。






『育てられるよッ!!!』

「「金はどーすんだ。金は。」」






美蘭の父の言葉の後…

愁洩がスッ…と恋嘩の前に立った。





「…俺が働く。」

「「「!!!」」」





その言葉を聞いて、両方の父親が愁洩を見た。
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