俺の女
ナイフの刃先を前に向ける竜馬。
諒弥がハッとして、声をあげた。
「竜馬ッ!やめろッ!」
「「まずはお前から死ね…愁洩!」」
「誰が死ぬか…バーカ」
「「竜馬さんッ!やめてくれッ!」」
「「もとの竜馬さんに戻ってくれッ!」」
【硫盟】たちが、変わってしまった竜馬に声を上げるが、竜馬の耳には届かない。
「…もう無理や…こいつは…完全にイってもーとる…」
後ずさりをしながら、鉄パイプを握りしめる愁洩。
竜馬は、ますますおかしくなっていく。
「「ふッ…ははッ…ははははッ…(笑)死ね…死ねぇ…皆死ねばいい…俺に逆らう奴は…皆死ぬんやぁー!」」
血相を変えて、鉄パイプを放り投げる竜馬。
「―――ッ…やっかいやなぁ…」
そのイってしまった目と意識は、愁洩に向けられていた。
愁洩の後ろから、湧愾が叫ぶ。
「逃げろ!愁洩ッ!」
だが、愁洩は動こうとはしない。
「…そーもいかんのよ…」
「なんでやねんッ!はよ逃げろ!!殺されんぞ!!」
叫ぶ爻を肩越しに見て、愁洩は鉄パイプを肩に乗せた。
「俺がここで逃げたら…お前らも…中のあいつらもやばいやろーが…」
そう言ってアジトをチラッと見て…鉄パイプを構えた。
「何ゆーとんねんッ!逃げろよッ!!!」
罹欹がまた叫ぶが、愁洩は一歩も動こうとはしない。
「お前ら…絶対そこ動くなよ」
「は!?なにゆーて」
「えーか!?わかったな!?そこにおって誰1人アジトに入れんちゃうぞ!!!!!」
怒鳴るように愁洩が叫んだ。
その迫力に、ピタッと足を止めてしまう。
「…殺してやる…殺してやるッ…(笑)」
竜馬はブツブツと呟きながら、ゆらっ…と、足を一歩前に出した。