俺の女



『先に…死んじゃう…みたいやぁッ』





涙を流しながら、苦しそうな表情を見せる恋嘩。





「―――ッお前は死なへんねんろッ?!俺が生きてる限りッ…死なんってゆーたやろーがッ!」





死ぬなんて…聞きたない

嘘やろ?
ゆーたやんけ…



愁洩は、信じようとはしない。






「姫ッ!!!死ぬなッ!ぜってぇ死ぬなぁッ!!!」

「姫はずっと…俺らと暮らすんやろッ?!」

「死ぬなんてゆーなよッ!!!」





甲斐と聖と蒋哉も、涙まじりの声で恋嘩に叫ぶ。





『みん…な…(泣)』

『恋嘩ッッ!!!』





騒ぎを聞いた美蘭も家から出てきた。


そして恋嘩の元に駆け寄って、しゃがみ込んだ。





『美…蘭…』

『なに…してんのよッ…笑顔で出て行った恋嘩が…なんでこんなことなってんのよッ!!!』





美蘭の目からも、涙が溢れ出た。

恋嘩は、このとき思った。



そっか…さっきゆわなあかん気がしたんわ……このことやったんか…






『ごめんな…美蘭……徹哉…任せていいかなぁ…?』

『―――ッ…』





美蘭は、言葉を失った。

魂が抜けたような目で、その場に手をついた。





「…まま?」





1人でここまで歩いてきた徹哉は、恋嘩の姿を見て立ち止まった…






『徹…哉…』

「まま…?ち…でてりゅよ…?」

『うん…ままね…ケガしちゃってん…』

「いちゃいいちゃいの…ちょんでけぇーちてあげよおか?」





幼い徹哉なりの、精一杯の言葉だった。

状況が読めず、ゆっくり恋嘩に近寄る。





『ありがと…徹哉…。徹哉…ままな…ちょっと遠いとこ行かなあかんく…なっちゃってんかッ…ケホッ…』

「……バカなことゆうなッ!!!」




愁洩が恋嘩の言葉を遮った。





「とおい…とこ?」





幼い徹哉は…首を傾げた。
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