女嫌いない年下のおとこのこ
その後繁忙期をなんとか乗り切り、季節は春。
聖は六度目の新年度を迎えて晴れて主任へと昇格した。
それはつまりワーカーホリックの聖にとっては先日の身の振り方をーーなんて考えはどこかへ吹き飛び、より一層仕事に精を出していた。
昼休みは返上、終電を逃すまで仕事をして疲れ切って帰っては饅頭一つで夕食を済ませる事もザラにあり、そんな生活をしているものだからみるみるうちに体重は減り、ついに外見にまで反映されてきた聖は、とうとう同僚だけでなく上司からもキツいお叱りを受けた。
そして華の金曜日、定時で会社を追い出された聖は一ノ瀬に勧められたバルに食事に来ていた。
ついでに「自己管理も出来ない酒豪ボッチのお前にはピッタリの店だから」となかなか辛辣な言葉もついてきたが、自己管理ができていないのも酒が好きなのも事実なのでぐうの音も出なかった。
おずおずと店内を覗いてみると良い意味で落ち着いた雰囲気の店で、一人客もちらほらと居るため女一人でも安心して入れそうだったのでホッとしつつ、中に入ってカウンターの隅に腰掛けた。
とりあえずジントニックと適当な食事を注文して、肘をつきながらそれを待つ。先にお酒が渡されたので口をつけるものの、聖の頭の中はやはり仕事の事でいっぱいだった。
週明けにはあれをして、企画書のチェックもして…ああ、あの部署に資料の催促をして…などと考えているうちにいつの間にかぶつぶつと口から漏れているのも気付かず、料理を運んできたイケメン定員に「お仕事大変ですね」と笑顔で言われて初めて声に出ていた事に気づきハッと我に返った。
恥ずかしさで真っ赤になりながらぐびっと酒を煽る。けれど性分なのか、どうしても残してきた仕事が頭から離れないでいた。