女嫌いな年下のおとこのこ
六章

side 聖



咄嗟に弟だと嘘をついてしまった事に後悔はない。

ああでも言わないと二度と会ってはくれないと思ったから。

叶うなら、あの細く長い指を絡めて手を繋ぎたい。
鍛え上げられたしなやかな体に抱きついてみたい。

けれどそれは、一生叶わぬことだから。


その我慢が功を奏し、瑞希とは相変わらず時折連絡を取りつつ顔を合わせている。

外で会うこともあるし、家に呼ばれて食事をしたり料理を教えてもらったりもする。

けれどそこにあるのはただの仲のいい幼馴染の関係だけで、それ以上でも以下でもない。


このままで良いのだろうか、瑞希の新しい恋の邪魔にはなっていないだろうか、そんな不安を抱きつつ数週間が過ぎた頃、会社で一つの変化があった。



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