女嫌いない年下のおとこのこ
「隣、いいですか」
脳内でTO DOリストを整理している最中、傍らからそう声をかけられたが顔も見ずにどうぞと適当に返事をした。
それからまたジントニックを飲もうと口をつけると、そこで漸くグラスが空になっている事に気付いた。
「すみません、モヒートいただけますか」
近くにいた定員に声をかけ、追加で新しいお酒を頼んだその時だった。
「空きっ腹に酒ばっか入れると悪酔いすんぞ」
近くから聞き覚えのある声がして、バッとそちらへ視線を向けると頬杖をつきながら呆れた顔でこちらを向いている瑞希が隣に座っていた。
「えっ、瑞希くん!いつから居たの?」
「今更かよ」
「最初に声かけただろうが」と言うが仕事の事しか頭に無かった聖は当然聞いておらず、ただただ動揺していた。
「なんで瑞希くんがここに?」
「そりゃこっちの台詞だわ。こちとら元々行きつけの店なんだよ」
そこで聖はこの店が一ノ瀬から勧められた事を思い出し、そういえば二人は元恋人だったなと瑞希がこの場にいる状況に納得した。
言った通り本当によく来ているらしく、顔見知りらしい店員から「また来てくれたんですね」と話しかけられていた。
「彼女、瑞希くんのお知り合いでしたか」
「幼馴染」
店員に言葉少なく返事をし、瑞希は「いつもの」と常連らしい注文する。
へえ、と視線を向けてきた店員に聖は軽く頭を下げ、それが先程独り言を聞かれていた相手と同一人物であった事に気付くと真っ赤にして俯いた。
そんな聖の様子を見た店員はくすくすと笑い、
「お仕事大変みたいですよ。話聞いてあげたらいかがです?」
追い討ちをかけるような言葉を残し、奥へと去っていった。