女嫌いない年下のおとこのこ


へえ、一ノ瀬くんって恋愛対象女もアリだったのか…と至極どうでも良い事が頭に過ぎったのを振り払い、聖もできるだけ言葉を選ぶ。


「で、でも瑞希くんならまたすぐ恋人つくれるでしょ?そんな落ち込まなくても…」
「アホか。こっちだって誰でもイケるわけじゃねえんだわ」


そう言いながらグラスに滴る水滴を指でなぞる姿はとても扇情的で、聖から見れば瑞希が傷心する理由はひとつもないように思えた。

けれどそもそも今回二人の関係がダメになった原因は少なからずも自分が関係しているので、これ以上は何かと突っ込みづらい。


「えっと…じゃあ、瑞希くんはいつもどんな風に相手を決めてるの?」


せめてこの話題から少しでも逸らそうと苦し紛れの質問だった。
くだらねえと一蹴されるかと思いきや意外にも瑞希は嫌な顔一つ見せず答えた。


「顔」
「……」
「なんだよ」
「え?それだけ?」


聖の台詞に、意味が分からないといったように瑞希は怪訝な顔をする。


「面の好みは大事だろーが」
「いやいや。もっとあるでしょ、趣味が同じとか、こんな性格がいいとか」


顔の良し悪しだけで選んで、一ノ瀬を選ばれたらそれはそれで複雑だ。

優秀で同僚として尊敬できる男ではあるが、特別顔が整っているかと問われれば何とも言えない。はっきり言ってしまえば、一ノ瀬という男は顔の造形だけで言えば十人並みだ。




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