女嫌いな年下のおとこのこ
潰されそうな胸の痛みと、ツンと痛む喉の奥のそれを必死で堪えて、聖は震える声で続けた。
「…瑞希くんを幸せにしてあげられるのは、私じゃないの」
だから、さよならだ。
瑞希の顔を見る事なくスマホとバッグを持って飛び出した。
振り返る事なく走って走って、息切れして足が限界を迎えるまで走り続けた。
どこかも分からない人が多く往来するその場で突然しゃがみ込み、聖は声を押し殺して泣いた。
「〜っ!」
時折刺さる怪訝な視線すら構わず、何度も流れ落ちる涙を拭った。
叶わぬ恋が事がこんなにも辛い事なのだと初めて知った。
瞼の裏にはいつまでも瑞希の顔が張り付いて、目を閉じるたびに愛しい顔が浮かんできてしまう。
どんなに求めても瑞希の心は得られない。
最初からわかっていたのに、どうして好きになってしまったんだろう。
その後もスマホは着信を知らせる音を鳴らし続けていたが、聖がそれを手に取ることは無かった。