女嫌いな年下のおとこのこ



会話のほとんどを右から左へ聞き流していたのでその名前を拾うこともしなかった。

けれど近くに居た人間には違っていたようだ。

課長を挟んで反対側に座っていた一ノ瀬から腕を指で突かれ、親指で顔を貸せと言われるように呼び出された。


先に個室を出た一ノ瀬を追いかけるようにして聖も部屋を出た。


「どうしたの?一ノ瀬くん」


あまり席を開けるのもどうかと思うので率直に尋ねた。

ドア越しに盛り上がる声を聞きながら、一ノ瀬は言いにくそうに尋ねてきた。


「白河さ、転勤のこと瑞希に話した?」
「どうして瑞希くんが出てくるの?」


もちろん話してるけど、と言うとそれに答えることなく矢継ぎ早に質問責めにされる。


「飛鳥と一緒ってことも?」
「言ってるよ」
「そん時瑞希の様子変じゃなかった?」
「…ねえ、何が聞きたいの?」


目を細めて睨めば、一ノ瀬は困ったように笑った。



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