女嫌いな年下のおとこのこ
「ショック受けてたよ、あいつ」
「……なんで、」
「そんなん答えはひとつだろ」
動揺が抑えられず、口に手を当て瞳を左右に揺らす。
頭が追いつかない。
だってそれじゃあ、まるで瑞希が自分に好意を持っているような言い方じゃないか。
その動揺を悟ったのか、一ノ瀬は肩に手を置いてきた。
「瑞希はさ、口より態度のほうが素直だろ。言葉にしねえ分全部行動で示すんだよ。…それはお前が1番分かってる事じゃねえの」
「…だって、瑞希くんは」
「瑞希にとってお前はずっと特別なんだよ。あいつが後にも先にも心許してんのは白河だけなんだって、いい加減分かってやれよ」
元彼だから分かる事だけどな、と自虐的に笑う一ノ瀬にもはや言葉が出なかった。
瑞希の行動をひとつひとつ思い返す。
同居をしていた時、する必要もないのにお弁当毎日持たせてくれた事、食べるか分からない食事を毎晩用意してくれて、聖が恋人としてみたいと言った一緒に料理もしてくれた。
お互い元の生活に戻っても、逐一連絡をくれたり会いたいと言えば時間を作ってくれて興味もないであろうショッピングも付き合ってくれた。
あんなに手間のかかる料理を何度も用意してくれて、母の味まで再現してくれた。