女嫌いな年下のおとこのこ
ピースが埋まるように、瑞希の心の内が見えていく。
あれは全部、聖を大切に思っていてくれての行動だったのだ。
好きな相手に想い人が居ると言ったのも、転勤を告げてあれほどまでに怒ったのも、側に居て欲しいと言ったのもーー彼が1番嫌がるはずなのに、抱き締めてきたあの行動も。
全部、瑞希の好きな相手が自分だったとしたら、驚くほどに全ての辻褄が合う。
「…私、帰る」
会場に戻って鞄を掴み、勢いよく飛び出す。
「一ノ瀬くん、後はお願いできる?」
「お前ちょっと俺に頼り過ぎじゃない?」
「今度何か奢る!」
返事も聞かずに店から出た。
大通りでタクシーを拾い、瑞希の自宅の住所を告げる。
もうとっくに手遅れかもしれない。
それでも居ても経ってもいられなかった。
どうしても瑞希の心を聞いてみたかった。
少しでも可能性があるならば、諦めたくなかった。