女嫌いな年下のおとこのこ
「瑞希くん、帰ろう。タクシー呼ぶから」
「…要らねえ」
「でもすごく顔色悪いよ。少しでも早く横になった方が良いよ」
それでも頑なに首を振る。
もしかしたらタクシーにも乗れない程に体調が悪いのかもしれない。
かといって精神的な問題が原因なので救急車を呼ぶのも憚られる。
どうしたものかと悩んでいると、突然瑞希がスッと手を伸ばして聖の腰にしがみついてきた。
「え!?」
驚いて引き剥がそうとするが、同時に聖の頭の中で昔の出来事がフラッシュバックしていた。
真っ青になった顔も、震えながらしがみついてくる姿も…あの日と全く同じだ。
「……瑞希くん。…うちに来る?」
聖の中で掛けだった。
この選択肢は間違いかもしれない。
そうなれば瑞希の中で微かに残っている自分への信頼も消え失せるだろうと。
けれど瑞希は何も言わず、静かに頷くだけだった。
ひとまず自分の判断が間違いでなかった事にホッとし、そのままスマホを取り出してタクシーを手配した。