女嫌いな年下のおとこのこ
「会いにも行かなかったし、電話にも出なかった。結局仕事じゃなかったけど、それでも私は行かなかったと思う」
衝撃だった。
あのお人好しの権化のような聖が他人からの電話を無視し、あまつさえ仕事であろうとそれを放棄したなどとこれまでの彼女からは考えられなかった。
何が聖をそうさせたのか、それを考えるだけでとてつもない愛しさが込み上げてきた。
聖の顔を胸元から掬い上げ、涙で濡れた顔にキスをする。
「今更行かないって選択肢も無いくせに生温い事言ってんじゃねえよ」
「……」
「待っててやるから、とっとと目処つけて帰ってこい」
「待っててくれるの?」
「ここまできたら何年待とうが同じだわ。その代わり連絡は都度入れろ。可能な限り帰ってこい」
そう言えば、聖はようやく笑顔を見せた。
こうして鎖をつけておけばきっと聖は意識をせざるを得ない。
外でも無い自分からの頼みだ。
彼女には言わないが、偶にはこちらからも会いに行こう。
本当の意味で自分の物にするのは、彼女が帰ってきてからでいい。
ーーそれまでせいぜい俺に囚われておけ。
惚れさせっぱなしのままでいてたまるか。
そんな考えを胸に抱き、瑞希はもう一度愛しい唇にキスを落とした。