女嫌いな年下のおとこのこ



「風邪引きてえのかとっとと髪乾かせ」
「ちょっとヘアオイル忘れてて」


そう言って聖は自室へ入り、すぐに出てきては洗面所へと戻っていった。

その後間も無くして出来上がった焼き魚に卵焼き、小鉢にはほうれん草のお浸しときんぴら、味噌汁に土鍋で炊いた白飯を並べてフンと鼻を鳴らしたところで聖がタイミングよく戻ってきた。


「日本のご飯だ〜!」
「どうせ洋食は見飽きてんだろ」
「でもクロワッサンアレンジのレパートリーだけはすごい増えたよ」
「また変な特技習得してきたな」


手を合わせて深々といただきますと言って箸で料理を口にし、ふわあ…とよく分からない声を漏らす姿は間抜けだなと思うのに、それすら可愛いと感じてしまう自分は相当浮かれている。


3年間、連絡を欠かしたことは無かったが直接会えるのは聖の一時帰国の際の数時間か、年に一度こちらから赴いた時だけ。

幸いだったのはあちらの人間が日本に比べて休みに寛容で、そのおかげで聖も休むという感覚を覚えおかしくなっていた仕事への意識が少し矯正された。
そこだけは感謝している。

そしてその影響か、きっちり3年で見切りをつけそのままフランスに残る飛鳥にあちらでの仕事を全て任せて帰ってきたことは成長と言えるだろう。


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