女嫌いな年下のおとこのこ
聖の家に帰る道中で少し落ち着いたらしい瑞希は震えこそ治っていたが、タクシーから降りてから一言も発さず聖の後ろを着いてきた。
エントランスのオートロックを解除し、エレベーターで部屋のある階まで向かう。
そのまま部屋の前まで歩いてドアの鍵を開けた。
「あんまり片付いてないけど、どうぞ」
瑞希は黙って家に入った。
そしてリビングに足を踏み入れた途端、そこで漸く声を発した。
「…きったね」
まさかの罵倒が第一声。
けれど実際、テーブルの上には物が散乱しているし、ソファには畳まれてない洗濯物が山積み。
クローゼットは家具や日用品のストックがぎゅうぎゅうに詰められて閉まらなくなっていた。
「だ、だから片付いてないけどって言ったじゃん!」
「限度があんだろうが」
「ぐっ…」
言い訳のしようがない。
特にここ最近は帰って寝るだけの家になっていて、最低限の洗濯とゴミ出ししか家事はしていなかった。
足場は確保できているので、とりあえず座れる状態にしようと山盛りの洗濯物を寝室へ投げ込んで、テーブルの上のものもまるっとゴミ袋に詰め込んで片付けた。
「さ!どうぞ!」
お座りください!とソファに誘導すると、ドン引きした顔のまま瑞希はおずおずと腰掛けた。