女嫌いな年下のおとこのこ
いたたまれない気持ちになりながらも、気を取り直して聖は無表情の瑞希に声をかける。
「気分はどう?あ、何か飲む?」
「要らね。違う意味で気分悪くなったわ」
「ごめんって」
どうやら会話ができる程には回復したようで安心した。
瑞希の自宅は塵ひとつ無いくらいに綺麗で整理整頓されているんだろうな、と自分の日頃の自堕落な生活を呪いながら聖も床に腰を落とした。
「……」
さて、家に連れてはきたもののここからどうするかは一切考えていなかった。
そもそもなぜあれほど自宅に帰ろうとしなかったのかも気がかりだ。
そんな聖の思考を読んだのか、尋ねる前に瑞希が答えた。
「ストーカーに家張られてんだよ」
「すすすストーカー!?誰か分かってるの?」
「前付き合ってたヤツ」
「!?ま、まさか一ノ瀬くんが…!?」
「違う、その前」
それを聞いてホッと胸を撫で下ろす。
いや、全く安心できる事ではないけれど、同僚がストーカーに転身していたとなるとますます見過ごせない。
けれど一ノ瀬は良くも悪くも一ノ瀬だったようだ。
「アホと付き合っとった間はアイツん家に居座ってた。別れてからはホテルやらネカフェやら転々としてたな」
「ええ…引越ししなよ」
「契約更新したばっかなんだよ、クソが」
「あー…」
そうなると手続きが何かと面倒くさいのは分かる。