女嫌いな年下のおとこのこ
「じゃあ友達の家とかは?」
「したらそっちに迷惑かかんだろうが」
「え、じゃあ私は…?」
「女はあの野郎もノーマークだろ」
そうかなあと腑に落ちないところを感じていると、しっかり体調の戻った瑞希は横柄な態度に様変わりし、テーブルにどかんと足を乗せた。
「ま、こういうのは初めてじゃねえし。いずれ既成事実作ってブタ箱にぶち込んでやるわ」
「それはそれで危険じゃない?」
「馬鹿か。何のために日々こっちが鍛えてると思ってんだ」
確かに言われてみれば、記憶の中の瑞希より身体がしっかりしてるなと思った。
上背が伸びたというのもあるだろうが、体付きは逞しい。
これはシックスパックもあり得るなと頭の中で妄想が膨らむ。
それはさておき、問題はこれからだ。
瑞希がどのあたりに住んでいるかは知らないが、今からでは終電も無いし生憎この近くにはホテルもネカフェも無い。
となると、選択肢は一つ。
「じゃあ、今日はうち泊まる?」
聖からすれば、心からの善意だった。
幼馴染の弟で尚且つ同性愛者という意識が貞操観念を低くしているのだろうが、それは瑞希の地雷を踏み抜くには十分だった。
「お前…痴女かよ」
「ひどっ!なんでそうなるの!?」
「男をホイホイ簡単に泊まらせてんじゃねえよ」
「だって瑞希くんだよ?それに、目の前で困ってる人を放っておけないよ」
聖の目は純粋そのもので、なんの澱みも無かった。
逆にその事実が、瑞希の頭を悩ませる。
「…じゃあ、お言葉に甘えてやるわ」
「分かった!あ、お風呂入る?着替え無いけど」
「着替えなら持ち歩いてるからそれ使う。あと湯は張れよ」
「はいはい」
気の抜けた返事をしながら聖は洗面所に向かう。
そこで目にした洗面所の有り様を見て顔を青くしている頃、リビングでは瑞希がソファの背もたれに腕を額に当てながら天井を仰いでいた。