女嫌いな年下のおとこのこ



本音を見せてくれないって何だ。

あんな屈辱的な事を素直にベラベラと話せってか、それこそ冗談じゃない。


「ああクソ、やっぱり此処に戻ってくんのかよ…!」


何度目を逸らしても思い出してしまう。

あの笑顔に、縋りたくなってしまう。
あの声に赦されたくなってしまう。

自分を弱くさせるーー唯一の女に。


風呂を溜めに行ったきり帰ってこない間抜けな幼馴染は、時折わあ!だのきゃあ!だの到底湯を張っているだけとは思えない音を立てながら騒いでいる。

さしずめ洗面所の目も当てられない惨状をどうにかしようと無駄な抵抗をしているであろう事は、見ずとも分かる。


昔からそうだ、一つのことに集中すると後は丸っとポンコツ化する。

本人はお姉さんぶっているつもりだが、生憎こちらは姉だと思ったことなんか一度もない。


「…料理が上手いやつって言ってたな…」


ガシャーン!と何かが落ちる音を聞きながら、瑞希はぼんやりと呟いた。



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