女嫌いな年下のおとこのこ
「何やっとんだアホか」
奇妙な動きをする聖に、更にサラダまで持った瑞希が怪訝な顔で言う。
「いや…まさかうちの食卓にこんな豪勢な料理が並ぶ日が来るとは思わなくて、つい…」
「は?こんなん買ってきたもんサッと盛っただけだろ、5分でできるわ」
「いや出来ないよ!?」
なんでも器用にこなす子だとは思っていたが、慣れないキッチンでよくぞここまでの準備をしたものだと感動しか湧かない。
これは歴代の恋人達はガッツリ胃袋も掴まれていたんだろうなと、何故か一ノ瀬が昼休みにコンビニのパンをしくしくと頬張る顔が頭に浮かんだ。
瑞希がテーブルにサラダの皿を置き聖の向かい側に座ったところで聖も腰を落とす。
「昨日の宿泊費はこれでチャラな」
「うん!いただきます!」
サンドイッチを頬張ると、トマトの酸味とベーコンのジューシーさが口に広がり、パンに塗られたマスタードの塩梅がなんとも言えない美味しさを引き立てている。
口いっぱいに頬張っているので美味しいと目で訴えれば、当然と勝ち誇った顔が返ってきた。
その後あっという間に完食し、食後のコーヒーまで淹れてもらい至れり尽くせりの幸せを噛み締めながら、聖はぼんやりと尋ねる。
「そういえば、お家はどうするの?このままホテル暮らしっていうのも大変じゃない?」
「あー…それな。ぼちぼち証拠も集まってるだろうしこっちから動くわ」
「証拠?」
「家中に監視カメラ仕掛けてる」
「おお…」
流石慣れてると言っただけあり、対策は抜かりないようだ。