女嫌いな年下のおとこのこ
「既成事実って昨日言ってたけど、具体的にはどうするの?」
聖が聞けば、それまで洗い物をしていた瑞希は水を止め、真顔でジッと見つめてきた。
「…それ、本当に聞きてえか?」
知る限りの中で一番低いトーンで言われ、これは聞いたら絶対後悔するやつだと直感で感じ取った。
やっぱりいいですと引き下がると、瑞希は何事も無かったように洗い物を再開した。
場数を踏んできた人間に素人が安易に踏み込むべきではないなと静かにコーヒーを飲む。
修羅場の数が違うのだ、知らない方が幸せな事もあるだろう。
気分を変えてスマホを取り出し、習慣となっているネットニュースを上から追っていく。
商談を上手く進めるためにも様々なジャンルのニュースを満遍なくチェックするようにしている。
そうしていると、有名なジムの広告が目に入ってきた。
不意に昨晩の事が脳裏に甦り、ジム通いについて真剣に考えてみようかなと思い立った。
「そういえばさ、瑞希くんはどこかジム通ってるの?」
「なんだよ藪から棒に」
「んー…最近ちょっと運動不足だからさ。特に趣味も無いし休みの日に通ってみようかなって」
丁度洗い物を終えた瑞希がキッチンから出てくる。
「俺が行ってるとこ紹介してもいいけど」
「ほんと?紹介キャンペーンとかある?」
「ある。つーかそれより先にお前は食生活気にしろや」
もっともなことを言われ返す言葉もない。
「料理しないにも限度があるわ。米すら無いとかふざけてんだろ」
「ひええ」
人差し指を額にグリグリと押し付けられ、凶悪顔で詰められ聖は間抜けな声を上げる。