女嫌いない年下のおとこのこ
最後に会った時の姿は今より幼かったけれど、それでも幼い頃から知っているその顔を、少し大人びたからといって分からなくなるはずがない。
「瑞希くん…?」
名前を呼ばれ、なに気安く呼んでんだとでも言いたげに美しい顔を嫌悪感いっぱいに歪める青年だったが、聖と目が合うとこれでもかと言わんばかりに目を見開いた。
「聖…」
予想だにしていなかった再会に、お互いそれ以上の言葉が出なかった。
その気まずい空気の中に果敢に割って入った秋山は、酔いの勢いもあってか「え、なに知り合い?」と遠慮なく聞いてきた。
「あー…昔馴染みだよ。昔近所に住んでた子」
「チッ」
え、今舌打ちした?と顔を向けるが、瑞希はその視線を無視して秋山に勢いよく近付くと一ノ瀬を引っ剥がすように奪った。
腕を肩にかけ、自分で歩けやと一ノ瀬の太ももを足でバンバンと容赦なく蹴りつける。
恋人なんだよね?と言いたくなるような雑な扱いに加え、思わず男女問わず見惚れる程に恐ろしく整った美しい容姿からは想像もつかない粗暴さに一同が呆然とする中、聖は一人何も驚く事なくそれを眺めていた。
最後に会ったのは瑞希が高校1年の頃だったか、と昔を思い出す。
聖の二つ歳下である瑞希は同じマンションに住んでいた所謂幼馴染というやつで、瑞希の両親が共働きだった事も相まってよく家に遊びに来ていた。
お互い兄弟が居らず一人っ子同士だったこともあり、生来面倒見の良かった聖は瑞希を弟のように可愛がっていたし、瑞希も幼い頃からやんちゃな性格ではあったが聖を姉のように慕ってくれていた。
聖が大学で家を離れるまでは、お互い同じ中高一貫校に通っていたこともあり何かと顔を合わすことがあったが、社会人になってまた会うとは世間とは意外と狭いものだ。
更に言うならまさかこうして、同僚の恋人として十年ぶりに顔を合わせる事になろうとは。