女嫌いな年下のおとこのこ
きっと、あの時の出来事に未だ囚われているのは聖の方。
あの日の後悔が心の奥底でずっと渦巻いている。
だから早く、瑞希には誰よりも幸せになって欲しい。
誰でも良いから、瑞希の固く閉ざしてしまった心をこじ開けて解放してあげて欲しい。
瑞希が幸せだと笑ってくれたなら、ようやく安心できるから。
「だから、こんな所で私の世話なんか焼いてたら駄目だよ…」
そう呟いたところでガチャリと玄関の鍵が開く音が耳に入り、手に持っていたシャツを畳んでそっと瑞希の衣類が纏めてある箱へと入れておいた。
「瑞希くん、おかえり。…随分と買ったね」
帰宅した瑞希の両手には目一杯に食材が詰められたビニール袋が握られていた。
「自宅に帰ってたんじゃないの?」
「帰った。んでデータ回収してきた。これはそれとは別だ」
そう言って瑞希はまっすぐにキッチンへ向かい、荷物を下ろすとエプロンを引っ掴み聖に向かって投げた。
「うわっ、なに!?」
「今からお前でも出来る俺が知る限りの簡単かつ栄養バランス完璧な料理を叩き込む」
「え、今から?急すぎない?」
「俺が期間限定の居候だって分かってるか?今のままだとお前、俺が出てったらどうせまた元の生活に戻んだろ」
「うっ…」
「はよそれ着てこっち来い」