女嫌いな年下のおとこのこ
聖の返事も聞かないまま、瑞希は自分もエプロンを身につけてさっさと準備を進める。
お腹も減ってないし気分じゃないんだけどなあと思いつつも、瑞希が家に来て以降食事に関しておんぶに抱っこ状態で、彼が言う事も最もなので観念してエプロンを身に付けた。
因みにお願いします師匠!とふざけたら真顔でアホかと返され撃沈した。
瑞希に言われるがままに食材を切り、フライパンで火にかける。
「どれほど酷いかと思えば案外ちゃんと包丁は使えんだな」
「私、料理しないとは言ったけど出来ないとは言ってないもんね」
「ドヤるな。底辺の話してんだよコッチは。普通に火ィ強すぎるわ」
「……」
ダメ出しはしっかりとされ、火力を落とす。
料理をする人間なら知っていて当たり前の事だが、強火で炒めたからといって火が早く通るわけではない。
聖は料理が出来ない訳ではない。
ただ何故か見た目はまともなのに全て「中の下、または微妙に不味い」味になる。
かと言って食材に混ぜるだけの調味料を使うくらいなら惣菜を買った方が正直楽なので、おそらくこれは才能の欠如だと早々に割り切って以降はキッチンに立つ事も止め、次第に料理というものから遠のいていった。