女嫌いな年下のおとこのこ
しかしその後、ぽつりと呟くように言った。
「そうでもねえだろ。殆ど別れ話は向こうからだしな」
その言葉に聖は一ノ瀬の言葉を思い出す。
心の内を見せてくれないと言っていた一ノ瀬だが、例え意地張りな瑞希でなくても軽々しく話したくない内容だ。
瑞希のこの様子だと何故振られる事の方が多いのか、理由は分かっているのだろう。
相手が悪い訳でもない、けれど瑞希も言いたくない。だから別れたいと言われれば何も言わずに甘んじて受け入れる。
聖はそっか、と言うだけでそのことについてそれ以上深くは聞かなかった。
けれど瑞希に諦めて欲しい訳でもなかったので、それは伝えておきたかった。
「大丈夫だよ。いつか瑞希くんの全部を受け入れてくれる人に出会えるよ」
ありきたりだけど、本心だった。
瑞希は心底嫌そうな顔をして言葉を失っていたが、それで良かった。
だってこんな完璧な幼馴染が、幸せになれないはずがない。
片付けが終わった頃にはすっかり日が落ち始めていた。
じゃあいつも通りに!と本日の夕食の支度を瑞希に任せ、聖は意気揚々と風呂掃除に向かった。