女嫌いない年下のおとこのこ
「この馬鹿が迷惑かけた。連れて帰るわ」
瑞希の言葉で、遠くに飛んでいた聖の意識が引き戻される。
一応お詫びのつもりなのか瑞希はその場にいる面々にそう短く声をかけ、一ノ瀬を引きずるように帰って行った。
二人の背中が小さくなった頃、残っていたうちの一人が聖にそそくさと寄ってきて小さく耳打ちをしてきた。
「一ノ瀬くんの恋人って、男だったんだね。彼氏とは幼馴染なのに知らなかったの?」
「うん。幼馴染といっても、もう十年近く会ってなかったしね」
「そっかぁ。でも勿体無いなぁ、あんなにかっこいいのに恋愛対象が男か~」
希望ゼロじゃん、と嘆く彼女はそう言えば恋人募集中と言ってたな、などと頭の片隅で思い出しながら適当に相槌をうつ。
そうしているうちに聖の呼んだタクシーが到着し、同僚達に別れを告げて乗り込む。
タクシーの中で流れる景色を眺めながら、久しぶりに顔を見たけれど、変わらず元気そうで良かったと安心した気持ちでいっぱいだった。