女嫌いな年下のおとこのこ



「フッ…」


聖が悶々としていると、気付けば傍にいた飛鳥が笑いながら肩を震わせていた。


「面白画像として見たことはありますけど、実際にやってる人初めて見ました」


まだ初日という事もあって遠慮がちで大人しい子という印象が強かったが、笑った顔は年相応で可愛らしく見えた。


「分かる。これ絶対作るの面倒だよね。どこに労力使ってるんだろう」


とりあえずアホ呼ばわりされた理由は後々考えるとして、温めても問題なさそうな中身だったのでそのままレンジに入れる事にした。

温めが終わって自分の分を取り出していると、ツボに入ったのかそれを見てまた笑う飛鳥に対してそこまで?と聖は苦笑いをして見せた。


「いや、そのまま何も無かったように普通に受け入れてる白河さんも面白くて」
「だってこれ自体は美味しそうでしょ?」


それがキッカケになったのか、少し会話が続きいつのまにか話が膨らんだ。


「飛鳥くんがフランス語出来るの助かるよ。正直私だけで手一杯だったから」
「出来ると言っても大学で専攻してたのと1年留学してただけですけどね」
「充分だよ。私も留学してたよ。どの辺り?」
「俺はーー」


その後も話は弾み、気付けばその日は弁当を一緒に食べながら昼休みを過ごした。


引き継ぎを任せるに当たって少しばかり不安は残っていたものの、飛鳥は知識も豊富で会話のキャッチボールも上手いので、きっと彼なら大丈夫だろうと肩の荷が下りた気がした。

実際に引き継ぎを行うのはもう少し飛鳥が仕事に慣れてからになるだろうが、初日で彼から信用を得られたのは聖にとっては僥倖だった。


けれどそれが瑞希のアホ弁当がきっかけというのは非常に複雑だが。

相変わらずどんなに考えても瑞希が怒っている理由が思い当たらないので、昼休みが終わる前に瑞希に「あれどういう意味?なんか怒ってる?」と連絡を入れた。

すると思いの外すぐに既読がつき、早々に返事が返ってきた。

けれどそれも「言葉通りだ。少しは考えろ」と全く答えになっていない答えが返ってきたので、ますます謎は深まるだけだった。


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