女嫌いな年下のおとこのこ
「一歩間違えたら死んでたかもしれないんだよ!?」
怪我の具合から、刃物で襲われた事は容易に想像がつく。
何ヶ月も執念深く付き纏うような男だ、瑞希を殺して自分も死ぬなどと恐ろしいことを考えていたに違いない。
「襲われたのが家だったらどうするの!?人が居ないところだったら?持ってたのがもっと危ない凶器だったら?危ない人って分かってたならもっとちゃんと考えてよ!」
怒鳴りながら、聖の視界は徐々に歪んでいた。
大きな瞳に耐えられなくなった涙がポロポロと零れ落ちる。
何処かで瑞希は何が起きても冷静に対処してくれると信じていた。
慣れているとも言っていたし、警察へ突き出す為の下準備もしっかり進めていた。
けれどその信頼が、瑞希の頭に血が昇りやすい性格を忘れさせていた。
瑞希の事を良く知っているはずなのに、その可能性を深く考えられなかった自分も情けない。
ずっと側にいたのに。
もしもに起きたかもしれない、最悪の事態を想像して更に涙が溢れてきた。
「私、瑞希くんが大切だって言ったじゃん…」
瑞希を心配したいのに怒りと悲しみと恐怖、色々な感情がぐちゃぐちゃになって責めるような言葉ばかりが口をついて出てくる。
「お願いだから、危ない事は辞めてよ…!」
歯止めが効かなくなった涙は止めようとしても次々と溢れ出る。
余計なお世話だと逆切れされるだろうか、そうだとしても、今回ばかりは絶対に許せないと譲る気は一切なかった。