女嫌いな年下のおとこのこ
聖に怒鳴られ呆けた顔をしていた瑞希だったが、反論せずに黙った後ゆっくりと立ち上がって聖の正面に立った。
涙に濡れた瞳でキッと睨みあげる聖と瑞希の静かな目が合った時、聖の肩に頭が落ちてきた。
「…悪かった」
耳元から聞こえたのは、小さく呟かれた謝罪の言葉だった。
「駄目、ちゃんと反省して」
「……」
瑞希の慢心を砕く為にも、今だけは簡単に許す訳にはいかない。
プライドがエベレスト級に高い瑞希にあの言葉を言わせてこそ、そこで漸く彼が反省したとみなせるのだ。
葛藤しているのか、瑞希はしばらく同じ態勢のまま黙っていた。
そして長い沈黙の後、その言葉ははっきりと聖の耳に聞こえた。
「……ごめんなさい」
顔は見えないが、なんとなく表情は想像がつく。
全く納得はしていないが、多少の溜飲は下がったので聖は長いため息を吐いて瑞希の体を軽く押した。
「…腕の傷、深いの?」
「そこそこ。…縫ったから1週間はこのままだ」
「右手って利き手じゃない。生活できるの?」
「仕事に支障はねえよ。…まあ、衛生的に料理なんかは無理だけどな」
「当たり前でしょ。絶対安静だよ」
腕に触れようとして、手を止めた。
瑞希から自分に触れるのはいいが、こちらから触るのはNGかもしれない。
そうして手を引こうとした時、その手をグッと握られ瑞希の胸に押し当てられた。
驚いて離そうとしたけれど、強い力で押し留められた。
「聖、俺は生きてる」