女嫌いな年下のおとこのこ
そう言う瑞希の胸板から、ドクドクと心臓が脈打つ感覚が伝わる。
「俺は死ななかったし、アイツは当分の間ブタ箱だ」
「……」
「お前がブチ切れるような事はもうしねえ。…だから、その目のやつさっさと引っ込めろ」
早く泣きやめと暗に言っているのだろう。
素直でない物言いに少し綻んで、瑞希の胸元を見ていた視線を上げた。
…が、どこか気まずそうに目を逸らす瑞希の表情に幼馴染のカンがこれはそんな可愛らしいものでないと気付かせた。
「…瑞希くん?」
睨むように目を細めると、瑞希はチィッと大きく舌打ちをする。
「…お前の泣き顔、加虐心煽んだよ」
「は?」
このタイミングで何を訳の分からない事をと思ったが、その時不意に昔の事を思い出した。
それこそ小学生の頃、自分より小さな男の子に悪戯の延長でよく泣かされてはその張本人が誰より楽しそうにしていた事を。
「…そう言えば君、よく虫とかトカゲとか私に投げてきては笑ってたよね」
「全部オモチャだったろーが。マジになってピーピー泣くお前が悪い」
「はあ!?もうなんなの!」
さっきまでのしおらしさはなんだったのか、今は一変してイタズラっ子よろしく笑っている。
けれど悲しいかな、その笑顔は子供の頃は怒るよりよく笑う子だった瑞希の懐かしい笑顔そのもので、思わずキュンと胸が高鳴り怒るに怒れなくなってしまった。