女嫌いな年下のおとこのこ
同じ土俵にいた筈の聖が先に進むのが許せなくて、足掻いていた。
同じ中学に入り、自分の容姿が優れていて異性からモテることを自覚してからは、馬鹿みたいに年上ばかりと付き合った。
次第にそれがエスカレートして通っていた塾の講師にまで手を出して、まさかのそれがアブノーマルな性癖の持ち主で好き勝手された挙句このザマ。
母親にそれがバレた時は死にたくなった。
別に聖が母親に事情を話した事は恨んではいないし、それが当然の対処だと思う。
だが自業自得の結果でこうなって、どんな顔で聖と話せばいいか分からなくなった。
何年経っても相変わらず異性は受け入れられず、熱の籠った目を見るだけでフラッシュバックしては吐き気を催した。
聖が地元を離れてから性の対象が男でも可能である事に気付いてからは多少気が楽になり、精神科にかかるようにもなりそれなりの生活を送れていた。
予想外の場所で再会してから、やはり聖だけは触れても大丈夫で、何処まで自分の中で許容できるのかを知りたくなった。
そうして理解した。
自分も例に漏れる事なく、聖の「惚れさせっぱなし」にハマっていたのだと。
聖の言う恋人とやりたい事の料理をしても楽しかったし、同じ空間に居ても吐き気どころか居心地の良さすら感じていた。
聖に「良い相手が見つかるよ」なんて他の奴を薦められた時はお前が言うなと普通に腹が立った。
そしてトドメとなったのが、瑞希を心配するあまりに泣きじゃくったあの瞬間。
あの八方美人の聖が、あの時だけは瑞希の事だけを見て、瑞希の為だけに怒っていた。
ずっとこの顔を見ていたいと思った。
異性からの好意に言いようのない気持ちの悪さを感じるのも、毎度同じ理由でフラれるのも結局は聖でないと駄目だっただけの話だ。