女嫌いな年下のおとこのこ
向かい合って座り、どちらともなく「いただきます」と言いながら箸を伸ばす。
「そういえば出社はどうするの?週一くらいでは出てたんだよね?」
「今週は全部リモート。つか金曜は病院だから有休」
「そっか。せめて抜糸できるくらいには良くなってるといいね」
「でないと困る。不便でしょうがねえ」
絶対痛いはずなのに、泣き言を一切口にしないのが瑞希らしい。
瑞希は嫌がったがガーゼや包帯の交換には聖も手伝っており、その際に目にした傷痕はかなり痛々しいものだった。
何か不便は無いか、我慢している事はないか、聞きたい事は沢山あるがあまり心配し過ぎると鬱陶しがられるので聖はこの話はここで切り上げてわざと話題を変える事にした。
同居を延長すると決めた時に何かあったら言うように一度言っているので、その場合は瑞希から言ってくれるだろうと信じて。
「そういえば私、明日午後から会議あるんだ」
「ん。了解」
各々仕事は基本的に別の場所で行っており、瑞希はリビングのテーブル、聖は寝室で物置と化していたドレッサーを片付けてそこで作業をしている。
会社が違うということもあるので、会議などで声が洩れ聞こえそうな場合にはイヤホンなどで予防するという取り決めをした。
それとは関係ないが、こうなって以来聖には少し楽しみができていた。
瑞希は怪我のせいで余計な体力と気力を使うからか、それとも服用している痛み止めの影響なのかここ数日は昼間に少し仮眠を取るようになった。
その寝顔を見るのが密かな楽しみになっている。
美形の寝顔は単純に目の保養になるがそれだけでなく、常に不機嫌そうな顔をした瑞希が警戒心ゼロで昔と変わらない寝顔をして眠るのでそれがなんとも可愛らしく、同時に自分が瑞希にとって安心できる場所になっている事に嬉しさを感じるのだ。