女嫌いな年下のおとこのこ
言われた通りにゴム手袋をはめて食器を洗い片付けをしていると、テレビの音が自然と耳に入ってくる。
聖も負けず劣らず芸能人はよく知らないがタレントや芸人らしき面々が楽しそうにトークを広げている。
ゲストに俳優だかアイドルだかを招いてこれから何かを始める様子で、ふと見ると番組内の企画でカレーの食べ比べを始めようというところだった。
幾つかのカレーか並べられ、有名店のものを当てようという企画。
聖は手を動かしつつそれを何も考えずに眺めていたが、人が美味しそうに食べているものには自然と興味が湧くもので聖は最近口にして感動した料理を思い出した。
「そういえば、前に瑞希くんが作ってくれたバターチキンカレー美味しかったなぁ…」
何気なくそう言うと、瑞希が呆れたような顔をでこちらを向いた。
「お前…さっきメシ食ったばっかなのにまだ食うんか」
「違うよ!カレー見てたら思い出したんだよ」
テレビを指差せば、瑞希は至極興味なさげに画面に視線を向けながら「あー…」と呟く。
「あんなん怪我が治りゃすぐ作ってやるわ」
「ほんと?やった!」
「つーかそれより…聖、」
名前を呼ばれて丁度シンクを磨き終えた聖はゴム手袋を外しながらなに?と返事をする。
「世話になった礼するから、なんか考えとけよ」
「えーいいよ、お礼なんて…」
「俺は借りは作らねえ主義なんだよ。四の五の言わずに週末までに考えとけ」
そうは言うが、聖自身も好きでやっている事なので何も思いつかない。
本当に、本当に絞り出して強いて挙げれば一つあるにはあるがそれを瑞希が了承してくれるかは正直微妙だ。
とりあえずこう言い出したら絶対聞かないであろう瑞希には分かったとだけ告げ、聖は風呂の給湯ボタンを押した。