女嫌いない年下のおとこのこ
自分に嫉妬せずともしっかり愛されてるじゃないかと思いながら横目でそれを見ていたが、一ノ瀬はふと箸を止めた。
「白河は知ってるか?あいつが女ダメになった理由」
「……どうして?」
「どんなに聞いても話してくれないんだよ。しつこく聞いたらこの間ぶん殴られた」
知っているかと聞かれたら、もちろん知っている。
一ノ瀬が不満に思うのも最もだが、瑞希が話す事を嫌がっているのに自分が勝手に話してしまうのはルール違反だとも思った。
だから聖は知らないフリをする事にした。そのうち話してくれるよ、などと気休めを言いその場を誤魔化した。
瑞希はいい加減な気持ちで付き合うような男ではない。話さないのには彼なりの理由があるはずだ。
だから聖はあくまでただの昔の知り合いとしての立場を貫く。一ノ瀬の背中を叩き、エールを送る。
「自信もちなよ。彼氏でしょ?」
「や、どっちかっていうと俺は彼女の立場というか」
「あ、その情報は要らないかな」
同じ女としてと言うのもおかしいが、あれほどの男が恋人になると少しの事で不安になってもおかしくはない。
幼い頃からとにかく整った顔立ちをしていて、尚且つ成績も優秀でスポーツも万能、カリスマ性もあって常に人の中心にいた。それこそ女嫌いになる前まではバレンタインのチョコを総ナメするほどに。
学年が違うけれど仲の良かった聖は何かと嫉妬の対象にされたものだ。
何にせよ、今はこうして不安になっているが、いずれ時間が解決するだろうと、そう思っていた。
その2ヶ月後、二人が別れたと聞くまでは。