女嫌いな年下のおとこのこ
やっぱり聞かなかった事にしてと言おうとしたが、飛鳥がそれを遮ってきた。
「逆に白河さんはいないんですか」
「え?」
「気になる人」
そう聞かれて咄嗟に浮かんだ顔に、聖自身がショックを受けた。
自分でも嫌になるくらいその人物が心を占めている事を突きつけられたようだった。
「…いないよ。そんな人、いない」
自分に暗示をかけるようにそう言った。
これ以上は駄目だと、頭の中で警鐘が鳴る。
目を閉じればあの夏の日の彼の様子が鮮明に浮かぶ。
ボロボロになったあの子を、これ以上自分が傷つけるわけにはいかないから。
彼を幸せに出来るのは、決して自分ではないのだからーー
気付けば目の前に電車が来ており、無言でそれに乗り込んだ。