女嫌いな年下のおとこのこ
瑞希はコンビニ袋を聖から取り上げると、背中を向けてさっさと歩き始めた。
自分の手から袋が消えた事に呆気に取られて反応が遅れたが、聖もそれに続いて小走りで駆け寄り瑞希の隣に並んだ。
「で、仕事は片付けてこれたんかよ」
「あ、うん。なんとかね」
「ハッ!良かったな、命拾いして」
悪い顔で笑う瑞希に、これは明日にまで持ち越していたら本当にやっていたなと確信した。
「本当だよ。次からはもっと穏便に脅して欲しいものだよ」
「うっせ。つか穏便に脅すってなんだよ意味分からんわ」
「確かに」
相変わらず口の悪い瑞希の言葉に笑って返す。
こうして並んで歩く事が許されるのも、親しげに話してくれるのも、偶々自分が幼馴染だっただけ。
だからこれ以上は望んではいけない。
瑞希が好き。
瑞希の顔を見た瞬間、とうとう自覚してしまった。
一生報われない恋だ。
だから気付きたくなかったのに、もう手遅れになってしまった。
けれどこの思いを伝える事は無い。
瑞希を幸せにしてあげられるのは、決して自分ではないから。
隣を歩く瑞希の横顔を見ながら、聖は心の中で固く決意した。