女嫌いな年下のおとこのこ
そうして数十分経った頃、聖が疲れた顔をして戻ってきた。
「明日出社しないといけなくなった」と落ち込んだ顔をする聖にちょっとした優越感が湧いた。
だが、気に入らないものは気に入らない。
聖に対しての気持ちを自覚して以降、自分でも引く程に日々独占欲が増していた。
「ごめんね?心配かけて」
そう言われた時は自分の気持ちに気付いているのかと思わず焦ったが、そうではなかったらしく一気に気が抜けた。
やっぱりこの女はアホだ。
一度リビングを出て薄暗い廊下に立ち自身のスマホを取り出して一通のメッセージを送る。
相手は自分の事も、聖の事も良く知る人物。
[おい浮気野郎、明日面貸せ]
返事は待たずにまた懐へ仕舞う。
そしてため息をつきながら壁に背を預け思考を巡らせる。
実のところ働き過ぎを心配したと言った聖の言葉も全くの見当違いという訳ではなく、この1ヶ月の間だけでも彼女の忙しさを目の当たりにしてきた。
この春に昇進した不器用な幼馴染は前以上に気を張って余計な事も何でもかんでも背負って、明らかにキャパオーバーになってもそれを笑顔で隠す、いやそれ以上に達が悪くそれに自分で気付いていない。
バルで再会した時、たった数ヶ月見ない間での明らかに分かる痩せ方に驚いて考えるより先に声をかけた。
それだというのに本人は性懲りも無く仕事の話をブツブツと呟いており、最早呆れるしかなかった。