女嫌いな年下のおとこのこ
翌日は通院の為予定通り有休を取り、事件時に世話になった総合病院の整形外科を訪れた。
しかし病院というのはどうしてこうも時間がかかるものなのか。
仕方ないとはいえ治療時間より長かった待ち時間にはうんざりしたが、なんとか抜糸の許可が下りて面倒な包帯生活からは解放された。
時間を確認した際に聖から心配する連絡が来ていたので今の状態をありのまま説明しておいた。
その後は自宅に戻り長い間放置していた家の中を整理していればあっという間に日が落ちて半ば無理矢理取り付けた約束の時間になったので、指定した店へと赴いた。
先に店へと着いたのは瑞希だったが、呼び出した相手も間も無くして姿を見せた。
「よう…久しぶり」
そう言って少し気まずそうに現れた元彼ーーもとい一ノ瀬だったが、黙って顎を突き出し座れと意思表示をすれば大人しく正面に腰を下ろした。
人数が揃ったところで注文を取りに来た店員に一ノ瀬には酒、自身には烏龍茶と料理を適当に告げて改めて正面の男に向き直る。
「いやホント、急に連絡きてびっくりしたぞ。一瞬復縁のお誘いかと思ったわ」
「ンな訳ねえだろどつき回すぞ」
「デスヨネ」
渇いた笑顔ではは…と笑う一ノ瀬に辛辣な言葉を吐くが実際のところ怒りの感情はほぼ無く、瑞稀にとってはこれが通常だ。
それが分かっている相手なので遠慮をしていないだけ。