女嫌いな年下のおとこのこ
実際一ノ瀬は何も悪くない。
贖罪の意味もあるだろうが元々気の良い男だから気を回してくれたのだろう。
けれどやはり、圧倒的に不利な状況で他に恋敵が出来てしまうとなると流石に焦りを覚えざるを得ない。
今現在、聖がその男をどう思っていてどれほどの関係性かは分からないが先手を打たなければ間違いなく横から掠め取られる。
それだけはさせてなるものか。
聖は自分のものなのだ。
生まれた時から、ずっと。
「手間かけた」
「帰るのか?」
「ん、聞きたい事は聞けたしな」
多めに代金を置き席を立つ。
「ここは俺が持つ。好きなだけ食ってクソして寝ろ」
「…ドーモ…」
話終えて早々に店を後にし、一人夜道を歩き進める。
想定していた最悪の事態だ。
飛鳥がどういう男かなどどうでもいい、知りたかったのは聖をどう思っているかだ。
おそらく今のところ聖は飛鳥を意識してはいないだろう、けれど今後は分からない。
どうにかして自分に意識を向けさせなければ。
そんな事を考えながら、聖の家まで足を進めた。