女嫌いな年下のおとこのこ
「随分と勝手な理由だね。というか、それをよく私に話せたね」
「白河だから話してるんだよ」
「どういう事?」
「俺、瑞希の事がわかんなくなったんだ」
ビールを飲んでいた聖の手が一瞬止まった。
「あいつ口も態度も悪いだろ。それでもちゃんと愛情は感じてたんだ。…でもさ、1番深いところは、いつも隠したまんまなんだよ」
言い得て妙とは、このことかもしれない。
幼い頃からなんでも出来てプライドも自尊心も高い瑞希は、人に弱みを見せるのをとことん嫌う。
けれど同時にそれは恋人にとっては、寂しさを感じさせるものでもあるのだ。
瑞希自身がそれを分かっているから、きっと浮気を知った時だって怒り狂ったりはしなかったのだろう。
けれどそれが、逆に別れを決める決定打になってしまった。
「そんな…そんな拗れた事になってたなら、言ってくれたら力になれたかもしれないのに」
「言わねえよ。ってか、言いたくない」
どうしてと問えば、それまで気まずそうに視線を逸らしていた一ノ瀬の目とかち合った。
「だって、白河はあいつを全部知ってるから」
ドクン、と心臓が嫌な音を鳴らした。