女嫌いな年下のおとこのこ
足の進みは止めないまま呆けると、高い位置にあった瑞希の顔がこちらを見下ろし目が合った。
「お前が食いたって言ったんだろ、バターチキンカレー」
「え?ほんとに?」
「怪我が治ったら作ってやるって約束したろ」
「で、でも家って…」
そんなプライベート空間に入っても良いのだろうかと不安になった。
1ヶ月のルームシェアで発作が出ない事は分かったけれど、そうとはいえこちらは一応女だ。
他人のテリトリーに自分から入るのと自分のテリトリーに入れるのでは意味合いが大きく違う。
そんな聖の不安を読み取ったのか、瑞希はふんと鼻を鳴らした。
「余計な事考えなくていいから、お前は腹だけ鳴らしとけ」
「!鳴らないよ!」
ムキになってそう返せば、瑞希は口角を上げて少しだけ笑った。
その顔があまりに昔と違って色気が含まれていて、可愛かった幼馴染の成長を嫌でも感じる羽目になった。