女嫌いな年下のおとこのこ


じんわりと温かくなる胸になんだか無性に泣きそうになった。


「お母さんの味…久しぶりに食べたらやっぱり美味しい。自分じゃこんなに上手く作れなくて」
「料理上手なおばさんが聞いたら泣くな」
「言わないでよ…既に何度も文句言われてるんだから」


実家に帰省する度に母からは料理くらいできるようになれと苦言を呈されていた。

仕事の忙しい自分を心配しての言葉なのは分かってはいるのだが、どうしても母のように上手くはなれず今やすっかり諦めている。


そこからも何を食べても感動の連続で、本当にお腹がはち切れる一歩手前まで食べてしまった。

満腹で動けなくなった聖を尻目に瑞希は手際よく後片付けを済ませ、食後のコーヒーまで用意して綺麗になったテーブルの上に置いた。


「満足したかよ」
「うん…幸せ」
「なら俺の勝ちだな」


何か勝負をしてたっけと思わなくもないが、悪戯っぽく笑う瑞希が可愛くて何も言わなかった。



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